ヒプノセラピー(催眠療法)インナーチャイルドセッション
~複雑性PTSD~
T様は以前に前世療法を受けに来られて、今回で2回目のセラピーでした。
「とにかく冬が嫌い。寒さや冬の街並みが怖い。」というお悩みで、毎年の冬の到来が耐えられないというお話です。以前に他所で同じ悩みでセラピーを受けられたのですが、その際に出会ったインナーチャイルドがまるで凍りついているように見えて、とても生きている感じがしなかったそうです。
それから以降、T様は体の中心にクーラーボックスに入れる氷を入れたように冷たく感じ、症状が改善されないとのことでお見えになりました。
インナーチャイルドとは、子供時代に辛い体験をした時にできる本人の人格の一部であり、大人になった今でも存在しています。多くの場合、複数人いて自分ではその存在が分かりにくいものです。セラピーで扱うチャイルドは通常は無表情であったり、傷ついて悲しんでいたり、または怒っていて攻撃的なこともあります。
T様のインナーチャイルドは「凍りつき」を起こしている状態で、それは、生物の生存本能からくる究極の生き残り手段で、あまりに強い恐怖や出来事の前では逃げることができずに体が凍りつく状態です。(雪崩を目の前にした人が恐怖で足がすくんで動けなくなったり、小動物が肉食動物に出会った際に恐怖から死んだふりに似た動けなくなるような状態と似ています。)
「凍りついたインナーチャイルドはもう見たくないけれど、チャイルドは自分だし体の状態を戻したいので勇気を出して来ました。」とお話しくださいました。
今回のような重篤なセッションのスタートは、呼吸のコントロールから入り、体の筋肉をゆるめて十分にリラックスしてもらいます。そこから、少しずつイメージを出す練習をしていき、徐々に催眠状態に入っていきます。どんな状態のチャイルドが出てきても大丈夫、受け止められると安心していただける状態までゆっくりと誘導していきます。
自由で守られた安全な空間をつくる
T様のイメージの中の山小屋を光のエネルギーで満たして、守られた安全な空間を作ります。そして、状況を見計らってその空間にチャイルドを呼び出しました。その際には、T様自身が子どもに退行してしまわないように(大人の自分の感覚を保てるように)手の平をハートの辺りに当ててもらってつなぎとめておきます。
インナーチャイルドを呼び出し、気持ちを受容して癒す
今回出てきてくれたインナーチャイルドも凍りつきを起こしていて、無表情でT様にはまるで仮死状態のように見えました。
話しかけても返事が返ってくることはなく、ずっと固く表情をかえずに顔も体も真っ青なチャイルドです。
目を合わすこともできない状態で、この日のセッションではただ横に座って抱きしめながら、誘導にそって、「今まで辛い思いをさせてごめんね。もう一人にはしないよ。一緒にいるよ。」とずっとインナーチャイルドに言葉をかけ続けました。T様は大粒の涙を流されていたのですが、途中から少しずつチャイルドの冷たく固まった体がほぐれてきて、体温が感じられるようになりました。
一度目のセッションでは、過度な負担をかけないように、ここでインナーチャイルドを癒しの光で包んで元の世界に帰し、T様の心を守れるように手順を加えて終わりました。
(感情の解放は急激に行うと反動がある場合があるので、原則としてセラピーでは侵襲的なことは行わずに穏やかに進めます。)
セッション終了後
T様の体の中心にあった氷のような冷たい感覚はまだ少し残ったものの、徐々に小さくおさまりました。インナーチャイルドの体に温かみが戻ったことに安心されていました。チャイルドと話はできなかったけれど、チャイルドがT様の言葉を聞いていていることが分かり、反応があったことを喜ばれておられました。
変化を感じられたことで、T様の表情も穏やかになられていました。
2度目のセッション
一度目と同じ手順で体を緩めてリラックスすることから進めていきました。
二度目に出てきてくれたインナーチャイルドは体じゅう傷だらけで血が流れている状態でした。
かなり心に負荷がかかる状態だと思われたので、途中で手法を切り替えるご提案をしましたが、(催眠状態でも意識がなくなることはないので、セラピストと普通に会話ができます。)チャイルドが一度目のセッションとは違って話せる状態なことが分かったので、T様のご希望にそってそのまま進めました。
とても不安で孤独だったことを少しずつ話すインナーチャイルドを抱きしめて、話をしっかり聞いていると、いつの間にか体の傷が無くなっていき、時折微笑むような表情が見られるようになりました。
終了後には、T様の体にある氷の感覚もかなり薄らいでおり、セッションの手応えを感じとられていらっしゃいました。
3度目のセッション
このときのインナーチャイルドは始め全身焼けただれたような服もボロボロの状態で現れて、T様は精神的にお辛かったのですが、2、3言葉を交わして抱きしめるとその姿はみるみる元の健康な皮膚の子どもの姿に戻って、途中からテーブルゲームのようなことを二人で楽しむことができました。
最初の姿には驚いたのですが、今回は前回、前々回に比べて抱きしめている時間が短くなり、チャイルドが何度も笑顔を見せてくれたことがT様を安心させ、勇気づけていました。インナーチャイルドはT様を待っていたようで、T様は、また来るねと約束をして終わられたとお話しでした。
4度目のセッション
今回は体に異常がない姿でインナーチャイルドがT様を迎えてくれました。少しはにかんだ笑顔を向けていたようです。家にいたくない、どこか違うところに行きたい、と話すチャイルドの願いを叶えて二人で空や宇宙に飛び立って遊びに行き、星々の間に浮かんだり、地球を見下ろしたりして二人で楽しく感じる時間を過ごされました。チャイルドはとても満足した様子だったそうです。
T様の子どもの頃のご家庭は夫婦喧嘩が絶えなかったそうで、しょっちゅう両親が大声を出すのを聞いていたそうです。
「冬の寒い日に、二階の部屋の冷たい窓のそばに自分が立っていて、一階で罵り合う両親の声が恐ろしくて、動けなくなっていたことを思い出しました。その時は自分はどうすることもできず、頭の中が恐怖でいっぱいになって脳が凍りつくような感覚でした。
母親に、『どうしてあんたはお母さんが殴られている時に助けにこないの!』と、叱られたことが今でも心に残っています。でも、怖くていつもできなかったです。冬が嫌いで、寒さが怖かった原因もこの辺りにあったのですね。」と、T様はご納得されて、理由が分かって心が落ち着いたと話してくださいました。
今回のT様のインナーチャイルドは、複雑性PTSDの傾向が見られ、かなり辛い経験をして難しい状態にありましたが、心に傷を負ったチャイルドが、当時本当にしたかったことや言いたかったことを、大人になった自分が認め叶えてあげることで癒されていきます。
インナーチャイルド療法では、辛い思いを請け負ってずっと頑張ってきたチャイルドの気持ちを理解し、わかってあげて、感謝することでチャイルドが癒され大人のクライアント様と統合できます。
チャイルドと統合することで、クライアント様ご本人も心の深いところで癒しが起き、さらに成長され、本当の自分を生きられるようになります。
※複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害の一種)
持続的な虐待やドメスティック・バイオレンスなどのトラウマ体験がきっかけで発症することが多く、年月が経っても日常生活や社会生活に様々な悪影響を及ぼす特徴があります。慢性的な心の外傷体験が原因で、通常のPTSDよりも複雑な症状が見られます。
・症状の例・・恐怖、不安、怒りなどの強い感情やそれらの調整の困難、自己認識の歪みや自己評価の低下、対人関係の問題、無力感、孤立感など
(クライアント様に御了解いただき、掲載できる範囲でご紹介させていただきました。 )
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